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美術館訪問レポート

ミテ・ハナソウ・プロジェクトの学校連携事業には、学校にミテ*ハナさんたちが出向いて授業を行い後日子どもたちが佐倉市立美術館を訪問する「事前授業+美術館訪問」、事前授業なしの「美術館訪問」、学校にて行う1回完結の「出前授業」の3つの形があります。いずれも対話型美術鑑賞の研修を受けたミテ*ハナさんたちが子どもたちの鑑賞活動をサポートするものです。「事前授業+美術館訪問」の連携プログラムを行うことになった佐倉市立下志津小学校の6年生34名は、6月の事前授業を経て、7月に佐倉市立美術館を訪れました。

事前授業を経ての子どもたちの美術館訪問

13時。教頭先生と担任の先生の引率の元、子どもたちがバスで美術館に到着しました。事前授業で会ったミテ*ハナさんたちもいるものの、エントランスに集合した子どもたちは少し緊張した様子です。4グループにわかれて、ミテ・ハナさんと一緒に4Fのホールへ移動します。名札づくりで子どもたちとの距離を少しずつ縮めたあと、学芸員の永山さんから美術館の役割や、鑑賞するにあたってのルールが確認されました。

 

美術館で気をつけるべきことを頭に入れたら、いよいよグループごとに展示室へ。事前授業で見た作品を見つけて指さしたり、本物の作品を目の前にして感嘆の声もきかれました。

各グループごとにミテ*ハナさんが選んだ作品の前で対話型鑑賞が始まりました。作品とファシリテーターのミテ*ハナさんを囲むようにして、立っているグループもあれば、座っているグループもあったり。じっくり、じっくり作品を眺めています。ミテ*ハナさんの問いかけに、どのグループの子どもたちも、ためらうことなく手をあげたり、積極的に発言している様子が印象的でした。

 

グループ鑑賞で、自分の意見を言ったり、みんなの意見を聞いたあとは、個人鑑賞です。ワークシートを持って絵の前に立った子どもたちの表情は真剣そのもの。静かでぴりりとした空気が展示室に流れました。

先生から見たこの授業の意義 

子どもたちが個人鑑賞に取り組んでいる間、担任の今井先生にお話を伺いました。

— 今回の学校連携事業はどのような取り組みと捉えていらっしゃいますか
佐倉市立美術館で行われているミテ・ハナソウ・プロジェクトと連携して、子どもたちに対話を中心とした鑑賞の仕方を教えていただきます。普段はなかなか本物の作品に触れることがないですし、学校での鑑賞には限界があります。いろいろな見方があることを知る貴重な機会だと考えています。

— 事前授業と今日の美術館での子どもたちの様子を教えてください
事前授業のときは、子どもたちはとても緊張した様子で“何が始まるんだろう”とドキドキより不安が大きかったようです。今日も初めは緊張も見られましたが、活動していくなかで、表情がやわらかくなってきて、進んで手をあげるなどとても積極的になっていきました。また、普段なかなか手を挙げない子がたくさん意見を言っていることが多く、印象的でした。取り組んでみて、事前授業があったから今日の学習が深まったのではないかと感じます。事前授業から段階を踏んで、今日こうして自由に鑑賞できるのがいいと思います。

—ミテ*ハナさんの活動の様子を見てどんなことを感じましたか
ミテ*ハナさんは、子どもたちの発言をすべて受け入れて話をしてくださるので、子どもたちが安心して活動に取り組めることがすごいなと感じました。あれだけの緊張感をほぐしてくれる存在があるから、積極的な鑑賞ができるのだと思います。学校の教科で染み付いている正解不正解を判断される回答とは違って、人はいろいろな考え方があって、自由な発想で話をしていいのだということを教えてくれました。

個人鑑賞を終えてホールに戻った子どもたちに、今井先生があやまっていました。「個人鑑賞のときに、みんなが非常に集中していたのに、話しかけてしまって」と。それほどまでの子どもたちの集中力に、先生も心から驚いていたようです。

また、一緒にいらしていた教頭先生は、他の地域のさまざまな教育現場での経験から見ても、この活動を「どこの市町村でもできるわけではなく、佐倉市の教育財産を使ったすばらしい試みで、一日外に出てきてやる価値がありますよね。」と話してくださいました。「絵を介して、グループ鑑賞では自由な考えを発信でき、また互いの意見を共有する。言い換えれば“享受”ですよね。このことは、社会の中でも必要なことで、子どもたちには教科書からでは得られない学びにつながっていくと思います。」

子どもたちとの対話の中で感じたこと

今日の美術館訪問を担当したミテ*ハナさん何人かに話を聞かせてもらいました。

あるミテ*ハナさんは、「私は事前授業には行ってないんですけど、一つの作品についてみんなでそれを観よう、誰かが話していたらみんなでそれを聞こう、という雰囲気が出来ていて、事前授業の賜物だなと思いました。」と振り返ります。

「私のグループは、事前授業で前もって触れた作品を鑑賞したわけではなかったのですが、だからこそより一層初めて観る作品にじっくり向き合っている様子でした。グループ鑑賞を始めて1-2分でひそひそとお友達と話し始め、ほとんど初めて触れた作品でも対話が始まるんだと思いました。」

「事前授業でアートカードを使って授業したときには、おとなしかった子が、今日は生き生きとした表情で積極的に話してくれたのは嬉しかったですね。」

ファシリテーターをしたミテ*ハナさんが、「ファシリテーターをやっていると、子どもたちが言ってくれたことを、全部聞き取れているかなという不安があります。振り返りをしたときにもサポートの人がそれを指摘してくれたりして、周りはしっかり見ていることに気づかされます。」と話すと、「それは第三者だから言えることであって、ファシリテーターとしては毎回これでよかったのかな、の繰り返しだよね。」というコメントが添えられ、みなさん大きく頷いていました。

「誰かが言った意見を聞いてさらに身を乗り出すように意見を重ねてくれる子どもがいるとすごく嬉しい。」のだそうです。ミテ*ハナさんたちは、声だけではなく子どもたちの様子もとてもよく観察されているようでした。

「子どもたちがまたやりたいなと思ってくれることが一番なのですが、絵のことを話してくれたりとか、鑑賞の楽しみ方を習得してくれた実感があります。自由鑑賞(個人鑑賞)のときに、あれだけ集中してワークシートに書き込んでいるというのは、興味がなかったら大人でも出来ないことだと思います。」と手応えもしっかり掴んでいます。

「事前授業に行ったときも先生が、子どもたちとこんな対話の仕方があるんだと再認識したとか、いつも話さない子が生き生きしていたなどと喜んでくださいました。プロである先生にそう言ってもらえたのは自信につながります。」

「アートは自分の意見を自由に言っていいんだということがわかってくれたんじゃないかと思います。迷っていたことも含めて言っていいんだという実感が積み重なれば、意見を持つ、言う、というところに発展するのだと思います。」

今日の活動は1期生のミテ*ハナさんが中心になって行われたのですが、見学をしていた2期生へのアドバイスも聞かせてくれました。「沈黙がこわいというのはあるけれど、その沈黙が子どものためだったら確保すべきだし、みんなが言わなくなったら、次は私の番だと思っている人もいるかもしれない。なので、沈黙をこわがらずに、自分を信じてやってほしいと思います。」

「ミテ*ハナの活動は一期一会。子どもたちとの対話によって、とても自分の心が豊かになっています。」
反省もしながらも、とても充実した表情のミテ*ハナさんたちでした。

 

文:米津いつか