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アートカード出前授業レポート

ミテ・ハナソウ・プロジェクトの学校連携事業の一つ、ミテ*ハナさんたちが学校に出向いてアートカードを使った美術鑑賞を行う「出前授業」。10月に、佐倉市立千代田小学校5年1組と2組の2クラスの授業で、それぞれ1時間の授業が実施されました。

アートカード「ミテ・ハナソウ・カード」を使った活動

アートカードを使った活動は、美術作品のハガキ大のカードで、楽しく遊びながらカードの作品を見て感じたことを共有し、美術鑑賞への関心やコミュニケーション力を高めるというものです。全国各地の美術館で、所蔵する作品を使ったオリジナルのアートカードが作られていて、佐倉市立美術館では、所蔵品60点をカードにした「ミテ・ハナソウ・カード」を連携に使用しています。この日、千代田小学校に集合したのは10人のミテ*ハナさんたち。アートカードや活動にあたっての準備もばっちりです。

 

授業の始まりを告げるチャイムが鳴ったところで、ミテ*ハナさんたちは教室に入り、簡単に自己紹介を交えて挨拶とこれから行う活動についての説明をしました。子どもたちは、2つの教室を広々と使って5グループに分かれて、それぞれのグループには2人ずつミテ*ハナさんが入り進行していきます。いよいよアートカードを使ったゲームのスタートです。

まずは、神経衰弱のように裏返したカードから3枚を選んでひっくり返します。それらのカードから、「生き物」「人がいる」「空」「色が同じ」など、共通するところを見つけてみんなに伝えます。それに対してグループのみんなが「納得!」「うーん (納得できない)」などとポーズで表現し、みんなが納得してくれたら、カードをもらえます。大きな動きでポーズをして例を見せてくれたミテ*ハナさんをまねてみんなも練習してから、カードを選んでいきました。

神経衰弱ゲームでアートカードに慣れてきたら、次に取り組むのは、物語を作るゲームです。 自分がひいた2枚のカードと、机の上にならべたカードから1枚を選んで、合計3枚のカードを使って物語をつくるというもの。ミテ*ハナさんのお手本に拍手が湧いて賑やかな雰囲気で始まりましたが、実際に取り組んでみると、最初のゲームで共通点を探すコツを掴んでいた子どもたちもなかな難しそうです。手にしたカードとしばらくにらめっこしたり、時折響く笑い声とともに、各グループに真剣な表情が垣間見えました。

子どもたちの反応

授業が終わったあと、たくさんの子どもたちが集まってきて次々と今日のプログラムの感想を聞かせてくれました。紹介しきれないほどにたくさんの声を聞かせてもらったので、その中からいくつか紹介します。

Kくん「自分の説明に自分が納得できなかったのに、まわりのみんなが納得してくれてうれしかった。」

Sさん「物語をつくるゲームのときに、いい話ができちゃって、みんながめっちゃ笑ってくれました。」

Cさん「共通点を説明したときに、納得してくれない人がいたんですけど、他の人がこういうことじゃない?って言ってくれて、そしたらちゃんと納得してくれて、友達に助けられた感じがしました。」

Hさん「物語をつくるゲームは、友達がやるまでは何も思いつかなかったけど、みんなの話聞いていたら思いついて、終わったときには楽しかったです。」

Hくん「みんなが拍手してくれたのがすごい気持ち良くて、こんなに気持ち良かったのは、授業の時に発表で成功して、みんなに盛大に拍手されたとき以来だなーと感じました。」

Mくん「2枚の絵ではつくれなかった物語が、3枚をあわせてつくれました。あと、共通点を探すゲームで、みんなに納得してもらえなかったときに説得できるように違う言い方を考えるのもおもしろかったです。」

Tさん「2枚のカードを引いたとき絶対物語をつくれないなって思ったんですけど、ずっと考えてたらだんだん浮かんできて、そのときはすっきりしました。みんながつくったお話は自分だったら絶対思いつかないものだったので、すごい驚きました。」

自分自身が発見し、言葉にできたことに対する嬉しさと、他者の発話への驚き、それとともにお互いに認め合う喜びなど、どれも一人ではなかなか得られないことを短い時間でアートカードによって体験できたようでした。 佐倉市立美術館には今日の「ミテ・ハナソウ・カード」で出てきた作品があることを伝えると、「虹色っぽい作品で2人の人がいるカードがあって、他のみんなはロウソクみたいって言ってたんですけど、実際はどうなのか、もうちょっとよく見て調べてみたいです。」と、具体的に行ってみたい理由を言葉にしてくれました。作品を細部までよく見る習慣を身につけるとともに、自分が感じたことを表現する力を育むことができるというアートカードですが、早速その効果を感じた瞬間でした。

 

担任の先生にとっての出前授業とは

授業が終わったあと、ミテ*ハナさんたちは担任の先生も交えて、今日の授業を振り返りました。振り返りの場でも様々な意見が交換されましたが、5年1組の担任の宮坂先生と、2組の担任の尾坂先生にも改めてお話を伺いました。

—出前授業は子どもたちにとってどんな体験になったでしょうか
宮坂先生:カードではあったけれど、美術作品に触れる機会はなかなかないし、美術作品に対して自由にものを言っていい、自分の意見を言えたっていうのは貴重な経験ですよね。自分が言ったことに対して友達が反応して意見を言ってくれたり、アドバイスをしてくれたりしたことも普段の授業でなかかなか経験できないのでそれも有り難かったです。

尾坂先生:今年異動で市外から転任してきたので、「佐倉市ってこんなことやってるんだ」っていう驚きがありました。私もそうですけど、美術館ってちょっと遠いなとか、なかなか普段から行ける場所じゃないので、実際に足を運べなくても、学校の授業で子どもたちにこうした美術作品に触れる機会を与えることができる活動がすごくいいなと思いました。

—普段の授業と子どもたちの様子が違ったところはありましたか?
尾坂先生:普段積極的に発言できない子がずいぶん手をあげていたり、自分の思いがあまり声に出せない子も、言葉がたくさん出ていたように思いました。一人一人違うカードを持っているので違った観点で話しやすかったのか、絵を見て話すというそのものがよかったのか、担任としては子供たちが楽しく活動していたことが一番でしたが、普段は納得がいかなくても流してしまうような子が、「納得がいかない」と食いついていたのにはびっくりしました。

—活動中のミテ*ハナさんの様子はいかがでしたか
宮坂先生:一番に子供たちのことを考えてくださっているような気がしました。うちのクラスにはみんなと同じように話すのが苦手な子とかいろんな子どもがいるんですけど、どの子に対してとても上手に対応してくださっていました。ミテ*ハナさんたちが入ってくださることによって子どもたちは安心感が持てて、活動に対する理解がより深まったような気がします。

尾坂先生:みなさん、子どもたちの声に耳を傾けてくださって、すごいいい雰囲気で活動できました。ミテ*ハナさんみたいな方がいてくださるってすごい。こういう活動があるんだよっていうこと含めて、どんどん広めていきたいと思いました。

—何か記憶に残るやりとりみたいなのはありましたか?
宮坂先生:あるグループで、みんながポーズをとって同意する場面があったのですが、そういう中である子が「自分はちょっと違うぞ」ってハテナマークを出してたんですね。同意されなかった子はちょっと悲しい気持ちになるような気がしたんですけど、そこでミテ*ハナさんが「どうしてそう思ったの?」って声かけてくれて、別の意見を持った子の話をきちんと聞き、それに対してまた周りの子が意見を言って、最終的には納得したんです。初めに発言した子も納得してくれて嬉しかったと思うんです。どんな立場になった子も安心して楽しく授業が受けられるような工夫をしてくださっているなと感じました。

—「ミテ・ハナソウプロジェクト」に対する期待や要望などありますか
尾坂先生:友達の意見聞いて自分も言えるようになったという感想が印象的でした。きっと何度も出前授業に来ていただくことは厳しいと思うんですけど、活動を続けていっていただきたいと思いました。

宮坂先生:美術作品を通して言語力、聞く力ですとか考える力、いろんな力につながって、子どもたちの学習の仕方としては大きな広がりがあるなと思いました。ミテ*ハナさんたちの持っていきかたが上手で勉強になりましたし、私自身もまた機会があったら受けさせていただきたいです。

  

文:米津いつか