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ミテ・ハナソウ展2016レポート

「ミテ・ハナソウ展」は、佐倉市立美術館の所蔵作品を見ながら、感じたり考えたりしたことを、おしゃべりしながら楽しむ展覧会。佐倉市立美術館が2013年度から行っている対話による美術鑑賞プロジェクト「ミテ・ハナソウ」の活動の要素が散りばめられていて、普段の所蔵作品展とは趣の異なる展覧会です。昨年2015年に初めて開催され、2回目となる展覧会が2016年7月23日から始まりました。

4つの間で「ミテ・ハナソウ」

展示会場となる2階への階段を上がると、「ミテ・ハナソウ」の活動の紹介の映像があります。展示への期待を高めるようなワクワクするサインが施された細長い廊下を抜けると、「ようこそ!」の言葉に迎えられて展示が始まります。

会場は「寝ころびの間」「椅子の間」「闇の間」「研究の間」の4つの部屋で構成されています。
カーペット敷きになっていて靴を脱ぐ寝ころびの間は、作品が通常より低い位置で展示されています。文字通り、ゴロゴロと寝ころびながら鑑賞することができるスペースです。
椅子の間では、椅子を自由に動かして絵の前で座りながらじっくり鑑賞することができます。もっと見ていたいけれど足が疲れたなんていうことなく、好きなだけ眺めていることができます。
闇の間は入口のカーテンをくぐると、薄暗い空間に身体が包まれます。目をこらすと作品の細部がしだいに浮かび上がってきます。
そして最後は研究の間。印象に残った作品についてワークシートに記録することで、鑑賞を深め、体験を定着することができるスペースです。展示されている佐倉市立美術館の所蔵作品全18点や作者についても調べることができます。

ミテ*ハナさんと「ミテ・ハナソウ」

会期中は展覧会場にて毎日11時から、市民ボランティアである鑑賞コミュニケーターのミテ*ハナさんが進行役となって、対話による美術鑑賞を行う「ミテ・ハナソウ・カイ」が行われます(所要時間1時間程度)。

とある日のミテ・ハナソウ・カイ。1Fのカフェスペースに集まった人たちの顔ぶれは、平日の夏休みということもあってかお母さんと一緒に参加する子どもが多い印象でした。ミテ・ハナソウ・カイでファシリテーターをつとめるのは、1期生のミテ*ハナさんです。この日は2チームに分かれて、ミテ*ハナさんと一緒にチームごとに展示室へ向かいました。

お子さんと一緒に参加していた台湾国籍のお母さんに、参加後の感想を伺いました。「娘は学校の授業参観のときには全く手を挙げたりしないので、今日は私の方がびっくりしました。」家で家族にはいろいろ話すけれど、学校ではあまり積極的には発言しないようです。母親が驚くほどに積極的だったのには、ミテ・ハナソウ・カイには家庭と同じように何でも聞いてくれるという状況があるからかもしれません。娘さんは、他の参加者と話せたのが楽しかったそうで「新しい友達が出来たんだよ!」と目を輝かせていました。そして、「一番面白かった作品はミスペリカン!(※長島充《メタモルフォーシスⅩⅤⅢ ミスペリカン》)」と、なんと闇の間にあった作品タイトルを覚えていたのでした。

「ミテ・ハナソウ・カイ」を遠巻きに見ていた団塊世代の男性は、「やりとり自体が面白いですよね。子どもたちの見方がね。新しい発想が生まれるのがいいですね。」と興味深く様子を見ていました。実は、お知り合いの方がミテ*ハナさんなのだそうですが、知人がやっている活動だからというのを抜きに、面白い試みだと思っていると話してくれました。

自分で「ミテ」「ハナ」した来場者の声

展覧会場を歩いていると、ところどころに「この絵の中で何が起こっている?」「他に気づいたことはある?」「どこからそう思った?」と書かれたテキストに出会います。ミテ・ハナソウ・カイでは、ファシリテーターさんからしばしば問いかけられるこの言葉ですが、ミテ・ハナソウ・カイに参加しなくても、問いかけが発生する仕掛けになっているのです。

「一人で寝ころがるのは恥ずかしいけれど、楽しそうね。」と、寝ころびの間でつぶやいていた白髪が美しい女性。「一緒に寝ころがって見てみませんか?」とお誘いすると、「この歳になるとかたいところで寝転ぶと腰が痛くなるから。」とためらいつつ、「どんな風に見えるのかしら?」と恐る恐る身体を横にされました。寝ころがるやいなや、「あら、モノクロの作品だと思ったのに、色が見えてくるわね。あ、あそこがオレンジ色っぽく見えてきたわ。」「寝っころがった方が、木が花開いてきている感じがするわね、不思議。」「あのお家の中には人がいる気配がするわね」と次々と発見を語り始めました。後からやって来た2-3人の女性グループにも「寝ころがってみると全然違いますよ」とオススメまでされていました。

中学3年生の2人組の男の子が二人で話しながらとても熱心に各部屋の作品を見ていました。二人はサッカー部ですが、上のフロアで開催している「印旛郡市中学校美術部展」に美術部の友達が出品していて観に来たのだそうです。研究の間に貼り出された来場者によって書かれたワークシートを見ていたところでお話を伺うと、「自分と全然違うことを考えているなぁと驚いています。自分もワークシートに書こうとすると、さっき展示室で見たのとは違ってまたいろいろ考えますね。」

時間をかけて作品を観ていた二人ですが、寝ころびの間では、寝ころがることはしなかったそうです。「何人かいたりワイワイがやがやしていたらよかったけれど、誰もいなかったからちょっと寝ころがることはできなかったです。監視員さんも寝ころがっていたらこちらもやりやすいかも。」なんて提案もしてくれました。改めて寝ころんで作品を観てみると、「ここに小さい石があるの、さっきは気づかなかった。」「こっちとこっちに描かれている植物は違うんだ」「この植物は一本で全部つながっているんだ」などと、さきほどは気づかなかった発見があり、二人のおしゃべりは続いていきました。

自分で「ミテ」「ハナ」した来場者の声

展覧会場を歩いていると、ところどころに「この絵の中で何が起こっている?」「他に気づいたことはある?」「どこからそう思った?」と書かれたテキストに出会います。ミテ・ハナソウ・カイでは、ファシリテーターさんからしばしば問いかけられるこの言葉ですが、ミテ・ハナソウ・カイに参加しなくても、問いかけが発生する仕掛けになっているのです。

6月に行われたミテ*ハナさんの基礎研修にも参加されたそうで、それによってミテ*ハナさんたちの苦労がよりわかるようになったと言います。「展覧会のオープン前日に、監視員とミテ*ハナさんたちとの合同説明会があったんですが、こういう会はお互いの立場を知るためにも、もっとやれたらいいですね。」と言われていました。これまでミテ*ハナさんと監視員さんの交流はあまりなかったのだそうです。

「去年のミテ・ハナソウ展1年目のときは、ファシリテーター自身が絵に近すぎたり、監視員として気になることがあったんです。でも2年目はそういったことはほとんどありません。1年の間でみなさんものすごく変わられたと思います。」と監視の経験からわかるその成長ぶりを語ってくれました。

展覧会は佐倉市立美術館2階にて、2016年8月21日まで。入場料無料。

 

文・写真:米津いつか