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ミテ*ハナさんの基礎研修

ミテ・ハナソウプロジェクトでは、この春、新たに2期生のミテ*ハナさんを迎えました。ミテ*ハナさんになると、まずはじめに丸2日間かけて行われる対話型美術鑑賞についての基礎研修に参加します。

2期生のミテ*ハナさん

2期生のミテ*ハナさんは合計10名。1期生には男性が1人いますが、2期生は全員女性です。ほとんどが市内在住の方ですが、たまたまウォーキングイベントに参加した際に佐倉市立美術館でチラシをもらって応募したという市外から通うミテ*ハナさんもいます。

応募した理由は様々。「子どもが学校でチラシをもらってきて一度は忘れていたのだけれど、再び手に取ったら頭から離れなくなってしまったんです。」「子育てがひと段落して社会に貢献できることを探していてやってみようと思いました。」「1期生の募集のときから気になっていたので、2期生の募集が出るのを待っていました。」「美術鑑賞は元々好きでしたが、専門的な知識は不要ということが決め手でした!」ほとんどの方は、「アートはよくわからないんですけど」「アートに関しては素人なんです」と口を揃えます。

基礎研修の様子

6月13日月曜日。2日目の基礎研修に参加するために、休館日の佐倉市立美術館に十数名が集まりました。まだどこか緊張を隠せない様子の2期生のミテ*ハナさんの他に、任意参加で1期生が数名、また、展示の監視員さんの姿も見られます。

NPO法人芸術資源開発機構ARDAの三ツ木紀英さんが講師となり、午前中は、対話型美術鑑賞における作品選びの重要性についての講義や、グループに分かれてコミュニケーションと聴くことにについて考える「聴く応答するワークショップ」が行われました。

 

午後の研修では、午前中に行われた講義の内容やワークショップで学んだことを思い出しながら、早速実践です。ホールのスクリーンに作品画像を投影して、対話型美術鑑賞のコーチングが行われました。研修では、今そこで起こったことを自分たちで捉え、言葉にし、さらに振り返ることで、自分自身でファシリテーションについて考える力を養えるように組み立てられています。作品を観ることに正解がないように、ファシリテーションにも正解がないことを、さまざまなタイプの研修を通して実感していきます。

 
   

研修を通して学んだこと

この日のコーチングで対話型美術鑑賞のファシリテーターに挑戦した2期生のミテ*ハナさんは、「初日は無我夢中で前のめりな自分がいたんですけど、今日の研修プログラムをやっていくうちに、やるべきことの視点がクリアになってきました。ですが、実際ファシリテーションをしてみると緊張で頭がまっ白でしたし、鑑賞者との対話が止まってしまうと、ついその沈黙を破りたくて、余計な問いかけをしたくなってしまいました。」と感想を聞かせてくれました。振り返りの時間では、コーチ役の三ツ木さんやみなさんから具体的な指摘をしてもらい、自分の課題がより明確になったとのこと、「すごく緊張したんですけれど、手を挙げてやってみてよかったです。」と、とてもスッキリした表情でした。

他にも「いろんな次元で考えを巡らせる必要があって、大変だけれどとてもやりがいを感じています。」という感想や、「言葉尻に意識がひきよせられてしまって、本質を見誤ってしまう自分がいました」という反省、「美術ではなくて、教育について想いを巡らせたり、思考法を鍛えられるような気がします。」という意見もありました。
「大人になると、相手の反応に対して本当はどう思っているのかなんて聞く機会は案外ないので、そこを追求する面白さとともに、人と話した充実感を感じました。」など、様々な学びの声が聞かれました。

私たちはついつい知識が先立って、わかった気になってしまうことがあります。また、自分がわかっていることは相手もわかっていると思い込んでしまうことも多々あります。その結果、相手にとっての大事なことを読み違えてしまうことも起こりかねません。
「聴く」ことや「対話」に向き合う中で、以下のような問いが生まれました。

・「正確に聴くことと」と「よく聴くこと」はちがう?
午前中に行われた、相手の話したことを自分の言葉で確認するというルールのワークショップでは、話している言葉を正確に覚えて自分の言葉として発しようとしてもうまくいきませんでした。正確に記憶しようとすることと、その人の話したいことを捉えるということは違うのだという気付きがありました。

・「共感」できなければ、よく聴けないの?
「自分と同じ意見の場合共感できて、よく聴くことができた」という意見が出ると、「では価値観が一緒でないと、その人の話は聴くことができない?」という問いかけが起こりました。「何が聴くことで、どうやったら聴くことができるだろう?」という思考につながります。

・ファシリテーターに必要なのは「まとめる」こと?
相手の言ったことを「まとめる」ことが「聴く」ことなのか?ファシリテーターとして「聴く」ってどういうこと?気付きとともに、これからずっと向き合うことになりそうな深い問いも生まれました。

これらの問いに対して、今すぐ言葉にするのは難しいのかもしれません。しかし、この日の研修プログラムを通して、ミテ*ハナさんたちは手探りでありながらも、何かしらの手応えのようなものを感じていた様子でした。

三ツ木さんは、鑑賞ファシリテーターという存在は、「作品と鑑賞者、あるいは鑑賞者同士の間に生まれるコミュニケーションをより深く楽しく意味のあるものになるように促していく人」だと言います。「ファシリテーターにとって一番大事で、そして難しいことは、『今、鑑賞者がどう感じ思考して、何を語ろうとしているのか』をよく『聴く』ことです。」と研修の中で繰り返していました。

受け止め切れないほどの気づきと課題を得た充実した一日。参加者同士の距離も近くなり、朝に見た緊張していた表情はいつの間にかずいぶんとほぐれて、最後のプログラムではどのグループからもたくさんの笑顔が見られました。
ミテ*ハナさんたちは頭をフル回転させて鑑賞コミュニケーターとしての一歩を踏み出しました。

 

 

文・写真:米津いつか